東京での連鎖反応、その最終回。 天候にも恵まれた初夏の夕刻、まだ薄く陽が残る野外音楽堂にとても心地よい微風が肌を優しく撫でてゆく。
ステージに目をやると、朽ちたゆうれい船の帆を思わせる幕がその風の存在を示すかのようにゆっくりとなびいている。 幕の下には楽器とともに無造作に置かれたワイン樽や宝箱の数々。 なるほど、発売直後なだけに野音にはニューアルバムのコンセプトが用いられているようだ。
そして客席の後方には、ゆうれい船を睨むカタチで設置された巨大なタコをイメージしたミラーボールのオブジェが怪しい光を放っている。このアイデアはミラーボールに魅せられた芸術集団「MIRRORBALLER a.k.a. KING CAY」が演出する光のオブジェと、LOSALIOSの音のコラボレーションとして会場の協力を得ることにより実現に至った。ちなみに、あまりにも素晴らしかったので翌日の演目にもそのまま使用されたほどだ。
いよいよ開演時刻。BGMがフェードアウトするとあの一瞬のざわめき。 そして遂に4人がステージに現れた。 以前までは数曲を経て途中からステージに登場するアイゴンだったが、この日は他の3人と同じく1曲目からの登場となった。 そう..3回目にして遂にフル参戦ということだ。 連鎖反応の結果(これがLOSALIOS)とも感じられる演出だ。
今後に控えるTOURに配慮する意味で具体的なセットリストは明かせないが、前半は比較的アップビートが続き、夕暮れになるにつれ心地よいリズムへと移行してゆくという流れで全体にニューアルバムの楽曲を散りばめながらの構成となっていた。
日没を迎えステージに照明が映え出すと、相対するミラーボールのオブジェも幻想的な光で会場を包み始めた。どうにも素敵な空間だ。 途中、達也がこのオブジェを「電気クラゲ」と紹介し、制作したスタッフならびに他のメンバーが失笑するというシーンもありながら意外にも緩やかなムードで舵がとられていった。実はライヴ終了後にメンバーから語られたのだがこの日はどうにもモニターのバランスがうまくいかず、全員が予想以上に苦戦していたらしい。 唄のないインストゥルメンタル・バンドにおいてモニターの不調は致命傷を意味する。それでもあそこまでのクオリティを演出できたのは他ならぬメンバーたちの勘と技量の賜物と言ったところか。 緩やかなシーン作りの背景にはこんな苦労もあったようだ。
そして後半。 否応なくメンバーのテンションも高まり、達也の叫びが会場を支配する頃、ステージは観客とともに最高潮に達しながらラストの曲を迎えた。
再び4人が登場するまでは「電気クラゲ」の独壇場だ。 日比谷の森に優しい光の粒を踊らせながらメンバーを待っている。 そして再び現れたメンバーは珍しく..というか、初めて? お揃いのTシャツ(TOKIEはキャミソール)を着用していた。 胸にはスワロフスキー(石)で「LOSALIOS」と描かれ、その石が光に反射しキラキラと輝いていた。 これは「光」に対する彼ら流のジョークだったらしい。
どうやらこの日は「光」もテーマになっているのでは? そう確信したのはアンコールでのこと。 メンバー4人の他にスポットと反射ボードを持ったスタッフが4人ステージに現れLOSALIOSとセッションを始めたのだ。 総勢8名による完全なる「音」と「光」のセッションだ。 彼らはHIKARI ARTの先駆者でしられる「SHINKILOW」というチームで様々なイベントの他にも素晴らしいアーティストたちとの競演を数多く演出している光集団である。 LOSALIOSが放つ瞬間のグルーヴに対し、人力での光アートを以て増幅させてゆく見事なコラボレーション。 とくにあの曲で魅せた生き物のように変化する光と音の融合は圧巻だった。 それらに多くの観客が魅せられていたに違いない。 そして気がついたら2時間が経っていた.. もうそんなに経っていたのか?というのが素直な感想である。
アンコールを終えると4人がステージ前に集まり肩を組みながら観客に応えていた。これまた珍しい光景である。 1月に発起した「TOKYO CHAIN ReACTION」も今夜で見納め。 6月3日からは新たなテンションをもってTOURに出発するのだ。 LOSALIOS 2005 TOUR『棺に乗って漕ぎまくれ』は、野音以上に狂熱したライブになるだろう。 そんな予感がどうしてもしてしまう夜でした。